LINE式、計画じゃなく予測で動くはたらき方を考える

 

1ヶ月くらい前のエントリーですが、ふとLINEの森川さんのブログ「事業計画」を思い出して考えたこと。「事業計画は立てない」という言葉が注目を集めているようですが、その本質について考えてみたいと思います。

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〜引用〜

最近取材を受ける度に今後の事業計画がないことについて驚かれるのですが、それは別にいい加減な会社ということではなく
・今はさほど必要ではない。上場企業ではないので細かく事業進捗を追いかける必要がない。
・作っても変更しなくてはいけないほど変化が早いので無駄な作業になってしまう。

という2つの理由があります。

そもそも事業計画を作る目的は資金ショートがないように注意深く見守ることと社内的に事業目標を達成するマイルストーンとして主に管理面で使われるものだと思っています。我が社も以前は細かく作っていました。

※写真はAppbankさんLINEカンファレンスの記事より引用

僕がNHN Japanを外から見ていて感じるのが、「デカイのに速い」という印象。事業のスケールも大きければ、打ち手の方法、タイミング全てが的確。計画はガッチリたてるわけじゃないけど、大量のオプションを持った予測はしていて、臨機応変に対応しているんだと思う。

確かに、上場していて、四半期で決算を出す必要があったり、外部から資金を調達していて株主に緻密な報告をする必要がある(逆に、報告が義務になってしまっている)状況であれば、計画が自分を縛り付けてしまうこともあるかもしれない。みんながみんな経営陣を信頼して、長期で考えてくれるステークホルダーというわけではないので、計画と、それへのコミットを期待されてしまうのは当然でもある。

逆に、Yahoo!、DeNA、GREE、サイバーエージェントとは異なる「上場していない」点を最大限に活かした「スピード」と「朝令暮改がやりやすい」点を最大限活かしているのがNHNさんなのかなと。

僕が理想だと考えるスタイルの会社

僕の人生も割とノープランだと言われがちですが、「計画を立てない」と聞いて、僕が真っ先に思い出したのは、この本。

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

Ruby on Railsのフレームワークを創った37Signals

初版を最初に読んだのは3年前の2010年で、今でもすごく好きな本なんですが、その中で響いたのが、「計画は予想に過ぎない」という言葉。

〜引用〜

長期のビジネスプランは幻想、占いの世界だ。マーケットの状況、競合他社、顧客、経済などの手におえない沢山の要素があるのに、計画を作っただけで、実際には制御できないものをコントロールした気になる。

計画ではなく予想とよんだらどうだろう?ビジネスプランをビジネス予想、財務プランを財務予想、戦略プランを戦略予想と名前を変えてみよう。気を揉んだりストレスに感じる必要はない。

僕の経験だと、去年のスマホアプリ事業「アドラッテ」の日本市場での展開では、きっちり一年分の事業計画を立ててスタートした。2011年の10月から、2012年の9月分までの売上目標をカッチリつくり、それをチームで達成すべく追っていく予定だった。しかし、そうすると、計画を上回ってる時は安心して目標を見失い、下回っているときはただただ数字に追われる。勝っているときはいいけど、そうじゃないときはあんまり楽しくない。だから、「必達」ムードは出さず、刻々と変化する市場の状況に対応して、取りこぼしだけはないように進めていった。

※逆に、「計画」がガチガチだったら多少無理してでも達成させていったのかも知れないけど。

結果的に良い感じで市場シェアを確保でき、ポジションとしてはGoodだった。でも、10月以降の計画は立てられていなかった。 偶然か、必然か、8月末に急に事業の運営を譲渡するという話が持ち上がり、その計画は9月で急遽変更することになった。 正直、事業譲渡に関しては計画外だったので社内は非常にバタバタしたが、以降の計画がない分、そこに固執せずに手放し、新たな事業へシフトすることができたんだと思う。実際はホントに大変だったけど。

※【業界の人向け補足】ノンSDKの単体リワードメディアをあのタイミングで手放すことは、普通に考えるともったいないと言われることもあった。外部からの不可抗力があったとは言え、当時、ネイティブアプリのプロモーション手法としては最強に近かったからだ。しかし、重複排除のためSDK導入が逆にメリットを発揮しだす2013年の流れを考えると、あのタイミングでの事業シフト、しかも1ヶ月もない状況での判断は、素敵なジャッジでもあったと思う。それは、僕らが計画に縛られず、ある意味流れに乗りながら動いたからでもあると思う。

「計画」のつまらなさと、「予測」のワクワク感

ちなみに、本質的には面白く無い「計画」をたてると、途端につまらなくなる。ワクワクしなくなる。やることが全て見えてしまっていると、義務感だけが残ってしまう。

そんなものは、卒業したいと思った。

「計画」じゃなくて、「予測」と考えることで、日々、楽しく仕事ができるんじゃないかな、と考えている。予測だから、当たったら嬉しいし、ちょっと外れたら、すぐに軌道修正すればいい。全然駄目だったら、やりなおせばいい。

彼らは計画を立てていないんじゃなくて、計画と呼んでないだけで、未来を予測しながら走っているんだと思う。そして、その予測力と、変化への対応力は正直すごい。

いずれにしろ、「小さなチーム」でもないLINE(NHN)が、このスピードで事業を展開しているのは事実であり、中身を覗いてみたいと思うのです。