月別アーカイブ: 2012年5月

働き方は一つだけじゃない@江戸川大学講義

 

先日、江戸川大学で1コマ講義をする機会を頂きました。

きっかけはTechWaveの集まりで濱田逸郎教授(日本広報学会理事長)と出会ったことだったのですが、 大学で講義をするというのは一つの夢だったので、その場で快諾させていただきました。

メディアコミュニケーション学部マスコミ学科の「 マスコミ総合科目Ⅱ(就職と私達)」という授業で、講義のテーマは下記。

放送・新聞・広報・広告・出版・ネット業界・音楽・ゲーム制作・芸能プロ等、マスコミ関連職種の「仕事の内容」「業界の現状と将来」「就職への道」等をご紹介いただき、キャリア設計の参考とし、3年生秋以降始まる就職活動の準備につなげる。

江戸川大学は、緑豊かなキレイなキャンパスが印象的でした。

ただ、2年生の時点で、このテーマの授業が設定されていることに、時代の切迫感を感じもしました。

シューカツが厳しいと言われる世の中。自殺者も2倍になっている。それは「就職という選択肢の中で、ごく一部の人気企業に皆が殺到し、収まりきらなくなっている」ことが要因の一つです。日本はここ50年くらい上手く発展してきた国だし、親の世代は成功体験から同じ道を歩ませようとするでしょう。しかし、時代は変わり、生き方は多様化していきます。手段はどうであれ、多様な働き方を許容するメッセージを送りたいと思います。

話せる内容は僕一人の経験としてだけですが、学生ベンチャー創業からの新卒で日テレへ、そしてインターネット広告のオプト、最初は事業も何もなかったHALO創業、という10年間をありのままにお話しました。

 

講義のスライドをシェアします。

ちょっとだけ編集してますが、言いたいことは一つだけ。

僕が座右の銘としているConnecting the Dotsです。

 

未来に先回りして点と点を繋げて見ることはできない。

君たちにできるのは過去を振り返って繋げることだけなんだ。

 

だからこそバラバラの点であっても

将来それが何らかのかたちで

必ず繋がっていくと信じなくてはならない。

自分の根性、運命、人生、カルマ…何でもいい。

とにかく信じること。

 

点と点が自分の歩んでいく道の途中の

どこかで必ずひとつに繋がっていく。

そう信じることで君たちは確信をもって

己の心の赴くまま生きていくことができる。

結果、人と違う道を行くことになっても同じ。

信じることで全てのことは、間違いなく変わるんです。

By Steve Jobs

 

参考:http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html

 

これまで働くということは、「学生⇒就職⇒出世⇒定年」と一直線にたどるのが当たり前であったが、これからのキャリアは一直線ではない。 だから、自分が今できることを、今の場所でしっかり残し、あとから線にするのが大切。学生が終わったら働くのもよし、旅や起業をするのも、転職をするのもよい。それぞれが自分の点をつなげていくことで、世界は多様でエキサイティングなものになっていく、と考えています。

 

■江戸川大のみなさんへ

約100名もの方に感想文を頂き、やっと全て読み終わりました。僕のお話をひとつの事例として、キャリア選択の幅を広げてくれたら嬉しいです。あと、講義ではいい忘れたけどシューカツばっかりしてないで、恋愛をしたほうがいいぞ。異性にフラれておかないと、企業にフラれたときのショックが大きすぎるから。
また、濱田教授、清水教授、このような機会をいただきありがとうございました!

 

イセオサムとしては、30歳を目前にして改めて、

Stay hungry, Stay foolish.

を胸に刻んでいこうと思います。

 

 

Thanks a lot, Jobs!

ドッドッドリランドで世界は良くなったのか?

 

母の日ということで実家へ顔を出したら、父親から

「GREEのコンプガチャが違法で中学生から40万円巻き上げているらしいが、お前のところは大丈夫なのか?」

と質問が来た。

なるほど、テレビや新聞でも大きく報道しているようで、「コンプガチャ」という言葉は60くらいのおっさんにも普及している模様。母親は、昆布?とか言っていたが。

彼の認識としては、下記3点のようだ。

・コンプガチャ禁止でGREEやDeNAほか、ソーシャルゲーム企業の時価総額が2000億円ほど吹き飛んだ

・被害者が出ていて、しかもそれが子供だ

・若い奴らがやっていて、どうもパチンコみたいに不正に利益を上げているんじゃないか

という認識の模様。

お役所とメディアが潰しにかかっているイメージはLivedoorの時とやや重なる。

 

ソシャゲというものには沢山の突っ込みどころがありながら、なぜ「コンプガチャ」を禁止にするかというと、景表法で一番突っ込み安かっただけで、当局からするとどこでもよいから突っ込んでおけ、という感じでもあろう。

※もちろん売上の10%から最大半分以上を占めるとなると、一番影響が大きいところだとも言える。

(画像はzakzakから引用)

 

この年になると家族との会話も意外と役に立つな、と思うもので、既存の世代の価値観と新しい価値観のすりあわせ、そして事業自体が生み出す価値について考えさせられた。

 

世代による価値観の違い

父は理系のサラリーマンで、ひとつの会社に35年くらい勤め上げたタイプ。経済が成長し続けていて、その見通しがあった昔ならそれが「普通」だろうし、悪くない仕事人生なんだと思う。おそらくその時代なら、僕も同じ選択をするのかもしれない。

ただ、当然そういった層はドリランドもやったことなければ、「ベンチャーは金に目が眩んだやつがやるものだ」なんて偏見も持っていたりする。HALOでやっているスマホアプリの『アドラッテ』(注1)のビジネスモデルも知らない。なんかスマホでユーザーに課金させて儲けているんじゃないか、と一緒にしてしまうのも無理はない。メディアはそういう報道をしているから。

※注1:アドラッテは企業から広告費を貰って、その一部をユーザーに還元するモデル。

規模と影響力が大きくなればなるほど、多くの世代に理解してもらう活動が必要になる。僕だって、親にやっている仕事の内容を理解して貰えないのは悲しい。その事業の意義をしっかり言葉にし、サービスに反映していくことを続けていくしかない。

それにしても、サラリーマンって給料として12カ月×35年=420カ月連続で会社に月何十万も課金し続けてもらえるなんて、どんなにLTV高いんだ。

 

事業が生み出す価値

先日の「僕の遠いところへ行ってしまったGREE」というエントリーでも書いたが、「企業は変化するもので、行き過ぎるときもあるけど方向転換は可能」だと考えている。しかし、そのベースにあるのは企業、もしくはサービスの「理念」である必要があると思う。距離と方向性を持ったビジョンを描くのは難しいけど、基本の考え方である「理念」は持てる。

元博報堂人事の山本直人さん(今はフリーランス)の「GREEは何がしたいんだろうか」というエントリーが僕はお気に入りなので引用させていただきます。

駅構内のB倍ポスターに、こんなキャッチコピーがあった。
「インターネットを通じて、世界をより良くする」
GREEの企業広告だ。時期的にいって、リクルーティングを意識しているのだろう。ちなみにこのコピーは、いわゆる「コーポレートメッセージ」のようだ。隣には英語のポスターもある。
ただ、読んでみても「どうやって世界を良くするの?」ということはわからない。あまりにも抽象的だ。他のネット関連企業のステートメントだとしてもおかしくはない。
そんなことを思いながら、ホームに上がり電車に乗った。
額面広告はすべて「ドリランド」だった。GREEの提供するサービスだ。右も左も「ドッドッドリランド」。まあ、そのセンスとかは特にコメントしない。
ただ、ドリランドは紛れもなくGREEのインターネットサービスなので、先のメッセージに「ドリランド」を代入してみてもいいんだろう。すると、こうなる。
「ドッドッドリランドを通じて、世界をより良くする」
それで、世界が良くなるんだろう、きっと。
理念は素晴らしい。でも上半身と下半身の人格がネジレを起こしているような感じだ。
「ドリランドで、世界はこんなによくなった」
いつかの将来、そんな報告がされることを、僕たちは期待していていいのだろうか。

※ちなみに山本さんの『グッドキャリア』という本は僕が学生時代に知人に頂き、キャリアを考える上で感銘を受けた本です。くれた人ありがとう。シューカツ生はとりあえずGREEを受ける前に読んで欲しい。

 

@michikaifuさん「コンプガチャ問題」に見る新興勢力の危機管理と矜持というエントリーも面白い。会社の根本はなにかというと、理念だ。ザッカーバーグも言う。壮大な理想があってこそ、仲間がついてきて、社会に認められるようになり、事は成される。応援してくれる味方がいないと、あっという間に潰される。

例えばfacebookをメインプラットフォームとする世界最大のSAP(ソーシャルアプリプロバイダー)であるZyngaの利益を比較すると、売上は10倍くらいあるが、利益はGREEやDeNAと同等クラスである。最近、これは社会から絞り取り過ぎないよう、ユーザーが継続して楽しめるビジネスモデルとして、一定レベルでコントロールしているのでは、とも考えている。(もちろん、日本におけるキャリア決済の普及、ユーザーの課金慣れという24時間ゲーセン状態があったとしても)

 

「インターネットを通じて、世界をより良くする」

ゲームで世界を獲るのか、インターネットを通じて世界をより良くするのか、そのメッセージは統一していくべきなんだな、と思う。僕ら自身の会社も、これまで理念と事業をなかなか一致させることができなかったから。特に去年はそのねじれに悩んだ。

HALOの理念は「希望が生まれるシカケをつくる」。ビジョン、事業は時代によって変化させているが、この理念は創業4年間変えていないし、これからも変わらないだろう。理念は会社がなにをやるべきか、やらざるべきか迷った時の指標になるもの。僕らはこれがあったから、道を外れるサービスやそのお手伝いはしないと考えてきた。でも、やらないことがあっただけで、やりたいことが見つかっていなかった。(今年、4年目になって、やっと見つかった気がする)

「やりたいことがなくなった時、人は何かで1番を目指そうとする」のではないかと僕は考えている。(もちろん、何かを実現するためには一番であることが必要な時もある)しかし、今のGREEには世界進出という壮大なビジョンがあるが、肝心の理念からサービスが離れて行ってしまっているのを感じている。

ねじれが気になるだけで、「ゲームで世界を良くする!」と言ってしまえばスッキリするんだけどね。

※僕より優秀なGREEのみなさんはとっくに気づいていると思うけど。

 

 

カツマー本『「有名人になる」ということ(@kazuyo_k)』が素敵な件

 

『断る力』以来、3年ぶりにカツマーこと、勝間和代さんの本『「有名人になる」ということ』を読みました。

僕の母も和代なので、どうもお母さんに見えてしょうがないのですが、中身は全く別物です。

思えば3年前はHALOを創ってまもなく、割とストイックにインプットを繰り返しては、活動をしていました。 僕自身、自転車通勤というのもあり、男性ながらカツマーに近い思想をもっていたのかもしれません。でも、やってみると疲れますし、嫁や周囲にもストレスを与えていたのでは、と反省しています。

5年くらい同じ業界の仕事をし、200冊くらい良い本を読むと、ひと通りのビジネススキルのベースとなるものが身につき、アウトプットも効率的に出せるようにはなりました。すると、自然と力が抜け、結果がでやすくなってきました。(もちろんまだまだですが、新卒から2年目くらいの時と比べると雲泥の差です)

僕自身、勝手に終わコンだと思っていた勝間さんですが、今回の赤裸々で正直な文体には非常に共感を持てました。これまでのただストイックに見える、常人には無理なやり方とは異なり、まるで成長の記録のようなストーリーを感じました。

 

まずは、本のまとめを。

カツマー的有名人とは

・人生の98%は運で決まり、その運とは人付き合いで決まる。

・有名になるためには「この人なら応援したい」「サポートしていきたい」と強く願って集まってもらえる

・テレビのギャラ=視聴率に反映されるか:文化人カテゴリだと、1番組5−20万円。タレントなら100万円くらいもある。

・自分が得た利益を、周りの人が楽しく仕事をできるように配分する

・批判を受けることは日常であり、余程のことがないかぎり「スルーする」ことが重要

 

上記は割と一般的な情報ですが、下記はこれまでの「戦略的な」カツマー本にはなかった記載ではないでしょうか。

 

新たなカツマー像

・確率的に高い勝算があるものにチャレンジしつづける。正しいことをしていれば、中長期的にはかならず結果が出る。

・自分が心から大好きなことを表現すると、結果は後からついてくる。

・成功と幸せの因果関係は、「成功→幸せ」ではなく「幸せ→成功」である。

 

この部分の、決してストイックにゴールを求めるのではなく、好きな事を、力を抜いてチャレンジし続ける、という方法論に共感しました。

では、彼女はどうやって「有名人」になっていったのでしょうか?

 

ミッションと、発揮すべき強み

勝間和代のミッションと達成の経緯

ミッションは「多様性を互いに認め合い、慈しみ合える社会の実現」

→「自分が自由であること、自分の学習意欲を満たすため」と考えていたら、自然と有名になっていった。

 

勝間和代の強み

・概念的なものを言語化する力。執筆、出演などに生きる

・ITを活用する力

・ファイナンスの知識、経験

・自転車、バイクなど学び、実践する力

・女性(美人過ぎない)

 

プロダクト=自分の強みを活かして提供する価値

なにか思いついたことを比喩にしたり、人がもやもや考えていること、なんとなく考えていることをフレームワークに落とす

→大前研一さんのようにフレームワークを使うが、より若い人に親しみやすく。

→神田昌典さんのように実践的だが、ITを全面に押し出す。

 

これを、ブログ→書籍→メディアへの取材記事→出演etc…という順に売りだしていく。

 

なるほど、「有名」の度合いは人それぞれありつつ、各人のブランディングに生かせそうです。でも、上っ面のブランディングと中身とのバランスは非常に大事。今、友人知人を含めたゆるめの5000人くらいの輪には非常に満足しています。でも、100万人、1000万人の前に出ることで力をもらえることもあるんだな。

 

押し付けじゃなくて、応援される自分であること。規模はどうであれそうでありたいと思います。