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WEBでコンテンツづくりをする人にオススメの本5選

久々の更新となりましたが、ここ最近はYoutubeを始め、インターネット、とくにスマホで見る動画コンテンツと視聴スタイルについて実験を繰り返しています。メディアづくりと、コンテンツづくりについて、最近おもしろかった本を5冊紹介します。

1.ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち

経営者は好きじゃないけど、 一番共感できるのはドワンゴの川上さん。コンテンツと、その配信と、コミュニティと、お祭りが一緒になったような。鋭い視点が満載。

例えば、UGC(コンシューマージェネレ−テッドコンテンツ)はオープンであるからコンテンツの画一化が起こる、とか。一歩踏み込んで世の中で言われていることはほんとなのか?を考えることの大事さに気付かされる。

2.400万人に愛される YouTuberのつくり方

HIKAKINさんとUUUMの鎌田さんの共著。ちゃんと読むと、本質的なことが書いてあります。視聴習慣を付けることとかはコンテンツづくりでとても大事ですね。テレビが毎日、毎週番組をやっているのと同じようなイメージを持ちました。

メディア視点でも、特にスマホメディアの場合、なんでKPIをMAUじゃなくてDAUにするのか、なんて議論があるけど、生活のペースに入り込むことを考えたら、WAUで見てるサービスは生き残れないんじゃないかな、なんて思わされます。(サービスの規模と哲学によるけど)

3.ナタリーってこうなってたのか (YOUR BOOKS 02)

これすごくいいんですよ。ナタリーの運営スタイルや、哲学みたいなものがすごくわかる。「報道的であること」に基づいた姿勢で編集部が動いてることとか、ネットのメディアではなかったこと。一方で、編集部の押し付けじゃなくて、見るものはユーザーが選ぶ、というやりかたはインターネット的。時間をかけてしっかりコンテンツを作っていこう、という志をもっている方に勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

4.YouTubeで食べていく~「動画投稿」という生き方~ (光文社新書)

ジェット☆ダイスケさんの本。3ヶ月前に読んだときは全然ピンと来なかったんだけど、すこしやり始めてみると深さがわかる。ただ、Youtubeで食べていくことはホントにラクではないけど、やりきったらいけるのも事実だと思う。好きなことで食べていくのは、楽しいことでもあるけど、覚悟のいることだと思う。だって、食べていけなかったら嫌いになっちゃうかもしれないから。僕は趣味を仕事にするタイプだけど、そうじゃない方は楽しみながらやるのが一番いいんじゃないでしょうか。

5.笑う仕事術 (ワニブックスPLUS新書)

元日テレのガースーこと菅さんの本。プロデューサーは、ディレクターの演出に口を出さないこと、とか彼なりの美学が詰まってる。WEBでモノを作ってると、経営者がプロダクトを見てたりとか分業しなことによるメリットもあるけど、やっぱりプロデューサーは企画やキャスティング、お金周りなどクリエイターがものづくりできる環境を整えることに徹するのがいいかな、とは思ってる。映画が監督のものであるように、テレビ番組も演出のもの。

株式会社まさかでは、コンテンツとメディアの真ん中でインターネット動画事業を一緒につくり上げる人を募集してます。デザイナーや映像クリエイター、編集者、ライターで興味を持った方はぜひ。

イセオサム

なぜ、Gunosy(グノシー)に人はイラっとさせられるのか?

あっという間に300万DLを突破したとのウワサのGunosy(グノシー)。「G」のアイコンだったころのユーザーたちとはお別れし、今は国民が使うニュースメディアを目指してスケールし始めています。下記は最近のCI。綺麗ですね。 news_20140410_gunosy

※photo by カナリア

しかし、下記記事を読むとなんか少しだけイラっとくる。すべて正しいことを言っていると思うんだけど、どこかに違和感を感じる部分も。僕が古いだけなのかもしれませんが、メディアを運営する人間として、その点を5つに分けて考えてみたいと思います。

人手には頼らない。すべてのコンテンツはユーザーの行動からロボットが決める―グノシー共同CEO・木村新司氏、福島良典氏に聞く

Gunosy(グノシー)の月次売上は数億円規模に

1.機械 VS 人間の思想

そもそも、機械に上から目線で情報を薦められることを望む人間は少ないのではないでしょうか?情報強者なひとほど、自分で情報とるよ、と。しかし、「地方情弱」という大変失礼な言葉が示すように、過剰なまでになにかをオススメされることを望んでいる人もいる。受動メディアと言われるテレビが未だに強い力を持っているのもその理由です。 今回、そちらをターゲットにしたのは、以前GREEがビジネスSNSからソシャゲ企業に進化したように、企業としてスケールするためには必須の方向性と言えるのかもしれません。

2.クリエイティブの取り入れ方のウマさ

先日実施された「レコメンデーションメイン」から「みんな同じ情報を薄く広く」の展開は成功したと思います。 そして、デザイン変更も賛否両論あるけど、僕の感覚からしたらすごくいい。カナリアの徳田祐司さん(いろはすのデザインなどで有名)のデザインも素晴らしいし、すごく親しみやすくなった。なにより、一流デザイナーが一流である所以は完成度の違いで、毎日使うニュースアプリとしては、このCIの統一感がこれからますます効いてくると思います。僕なんて、「G」のころはアイコンが嫌で使わなかったのに、いまは時々ヒマなとき起動しちゃってます。

3.マネタイズとユーザビリティのニクい両立のさせ方

マネタイズのお話って、結構難しいものです。ユーザーやパートナーがいる中で、自社だけが儲かっているようだとよろしくないし、本当に儲かっていなかったらサービスの存続が心配される。ただ、語ることが良い影響をおよぼすこともあるので、叩かれる事を覚悟でこれが言えちゃうところは強いと思います。

上記のインタビューにあるとおり、売上は既に億単位とのこと。

アプリでメディアをやっている方からすると信じられない数字だと思いますが、下記スーパーざっくりした試算だと割と納得いく数字だと思います。

  • 固めで300万DL
  • MAU率30%(獲得初月を含めるとそれ以上 ※Smartnewsが70%と言っていたので、もっと伸びると思う)
  • MAU約100万人
  • 月売上:2億円(超ざっくり)

すると、ユーザー1人が1ヶ月に200円くらいの収益を産んでくれるんですね。クリック単価が@40円だと、メディア落ち@40円。1人が1ヶ月に5回くらいクリックしてくれれば出る数字です。(ここに、アドネットワークを活用してマネタイズしているメディアと、自社でそれを持っている企業の利益率の差が出ます)

そうすると、3ヶ月〜6ヶ月でユーザー1人が生み出す金額は、600円〜1200円。これなら調達した金額と合わせてある一定量までCM無双ができちゃいます。

ちなみに他メディアで収益率をもっと上げるにはネイティブ広告がカギかなあと思っています。 スマホのメディアで割とよくある数字で1MAU10-50円くらいだから、今の5-10倍は利益率を向上させられる可能性をスマホは秘めてると考えています。ココらへんは木村さんに共感するところ。ゲーム以外の広告主がここからさらに入ってきたら、本当にブレイクしますよ。

4.メディアとのリレーションのウマさ

グノシーのウマイところは、最初は勝手にいろんな記事を集めてきて、一定のロジックをベースにアプリに掲載、トラフィックを各メディアに送る、というもの。「グノシー砲」という言葉があるとおり、この時点ではメディアにとって非常にありがたい存在でした。さらに、「チャンネル」を設けてメディアを公式のパートナーとして迎えていった。これも、なんかウマイです。

ただ、ちょっと前の路線変更で、結構グノシーのほうでメディアが見れちゃう状態になり、その中での激しいマネタイズが始まりました。メディアとしてトラフィックを得れるのでチャンネルに参加したい反面、その目次でマネタイズされちゃうとちょっと切ないんじゃないかな、とも思います。おそらくグノシーネイティブアドの収益が高すぎて、トラフィックを送る前に一番美味しい部分のマネタイズが完了しちゃってる。

今後はメディアにもそれを提供してくれると思うのですが、これもメディアが困ったタイミングできっと手を差し伸べてくれるんじゃないかな、と推測できるからなんかニクいw 結局よいエコシステムが出来上がるんじゃないかな、と思います。

5.若いエリート集団のホワイトさ

アタマのいい人が、アタマのいいやり方をして成功するとイラッとしますよね。普通にやったら凡人には勝てないですから。だから、例えば今の訴求だと東大卒エリートが、上から目線で地方情弱に「このアプリ使うとアタマよくなるよ」あ、でもそれ刺さらないから「雑談力上がるよ」みたいに聞こえちゃうと思うんです。ただ、実際のユーザーにはそこら辺さえも伝わらないからいいのでしょう。

さらに、オフィスもキレイ、場所もいい、みんな8時に帰る。ベンチャーってもっと泥臭いイメージもありますが、割と大人なスタイルです。ビジネスのスケールも大きいし、社会的意義もありそうだし、すぐに儲かってるし、早く帰れるし。通常のスタートアップのイメージの、ビジネスとしての可能性は見えそうで見えなくて、社会的義だけでがんばってて、なかなか儲からなくてカップラーメン食ってて、男子5人くらいでオフィスで徹夜、みたいなイメージと真逆です。

しかも、スタートアップが10億円を一気にCM投下してくれるのってすごく楽しい社会実験ですよね。そこまで振りきれる思い切りのよさも持っているところが、ただのお利口さん集団とは違うところ。CMでも、ウルトラマンでコケたか?と思ったところに超細かい軌道修正いれて、合わせてきているのがすごい。 みんな失敗しながらもチャレンジし続けていて、応援したくなるような人たちです。もし欠点があるとしたら、エリート意識が国民に伝わっちゃったとき、かなと余計なおせっかいをするくらいです。

イラッとするポイントまとめ

まとめてみると、すべてがうますぎてイラっとくるんです。すべて、自分ができてなかったことだから、自分にイラっとくる。そう感じる人が増えるのは、いいことなので、グノシーにはさらに突き抜けて欲しいな、と思います。

僕の場合はもちょっとだけ人力かけないとメディアって面白くないと思っているので、また別軸でメディアづくりをがんばってみようと思います。

あ、流行りの旧メディアからインターネット業界への転職でいうと、僕はテレビでズームインというニュース番組を担当してたので、そろそろお呼びがかかるかな。

ではまた!

※もし事実誤認とかありましたら@ossamまでご連絡くださいませ。

 

グロースハックで陥りやすい二つの罠

今、なぜ「グロースハッカー」が注目されているかというと、インターネットがそういう時代に差し掛かったから、だと考えています。時代は流転していて、パラダイムが変わるごとに、創る人→広める人→演出する人というように活躍する人が変わってくる。(僕の好きな本、神田昌典さんの「優しい会社」にインスパイアされてます)

周りのスタートアップの様子を見ていても、プロダクトを創ったものの出した後の戦略が描けていなかったり、大きめの企業になると、マーケティングは広告のみに頼っていたり、と継続的にサービスを成長させる土壌はまだ整っていないようです。一通りサービスを創れる環境が整った今だからこそ、各社が求めているのが次のフェーズの、サービスを成長させる人=グロースハッカー。ということではないでしょうか。

これから、という方は、下記の入門書がシンプルでとっつきやすいのでオススメです。クックパッド加藤さんのボリュームある解説も実践的で参考になると思います。

僕自身、グロースハックという言葉を意識してやってきたわけではないのですが、お金をそんなにかけずにできることってあるよね、と思ってボケてやアドラッテ、そして今回の「新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」のお手伝いなど、グロース戦略を立案し、実行してきました。以降、経験談を元に、ポイントを5つ書いてみます。ラスト2つが最近僕が気になっている「罠」です。

1.マーケティングからグロースハックへ

これまでのマーケティングとは?

出来上がったものを、顧客に届けること。CMや宣伝や資金でサービスの「ブランディング」や「マインドシェア」など漠然としたものを追い回す、予算がある人のリッチなお祭り。お祭りだから結構楽しい。

グロースハックとは?

ひたすらユーザーと成長とを追跡する。戦略が当たれば、ユーザーがユーザーを引き込む連鎖反応が生まれる。小さなカイゼンの複利計算で、プロダクトを成長させながらユーザーを獲得すること。予算がない人でもできる手段で、割と現実を見る仕事かも。(SEMの運用とか、あるKPIを定めて運用する場合、こちらに含まれると言ったほうがよいかも)

グロースハックとは、「出来たものを渡されたマーケターが、漠然としたプランでお金を使うこと」とは違い、「ユーザーが動くことによってサービスが自然に成長するエンジンを創りだすこと」を強く意識して行うカイゼン。このマインドセットが大事なんですね。

2.プロダクトの中にマーケティングを内包する

僕が、一番好きな言葉です。これまで僕は、プロダクトを創る担当とプロモーションする担当が別になっている会社を多く見て来ました。しかし、元々マーケターだった僕ら自身がプロダクトづくりをするとなると、プロダクトの中にマーケティングを内包することが自然な行動でした。プロモーション費用を払うお金もなかったですし。ユーザーがプロダクトを使ってくれて、よければ友達にも紹介してくれたり、サービス内でコミュニティが出来上がるからユーザーが再訪してくれたり。この設計思想が、リリース時に実装されていたことが成長に大きく寄与しました。

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一番強くイメージしていたのは、DropBoxの手法。友達を招待すると、容量が増える。良いサービスだから友達に教えると喜ばれるし、僕も嬉しい。一人招待するたびに、DropBoxチームに貢献出来ているようで、なんだか楽しかったのです。

 

3.小さなカイゼンの複利計算

一つの手法が出せる効果は、2倍、3倍とはいかないかもしれない。しかし、20%のカイゼンを5回繰り返せば、1.2の5乗で2.5倍の効果になります。ユーザーの入り口から、サイト内で詰まっているところ、友達に紹介するところ、カイゼンできるところは無数にあるはず。それを一つひとつ見つけ出し、検証し、成果につなげること。日本人のほうが得意そうですね。

ここまでは、本やいろんな記事にも書いてあるように、世の中でよく言われていること。残り2つは、僕が陥りやすそうだな、と考えている「罠」です。

4.ユーザーは「ある特定の一人」を想定した数字で見ていいのか?

こんな感じで、メルマガやバナーのコピーライティングをカイゼンしたりしている企業も多いでしょう。例えば、あるグルメサービスの有料プランの訴求をしたいとします。クリエイティブは2本。

ひとつは、「今日から30日無料!」 CVR5%

もう一つは、「ランキング機能が使える!」 CVR3%

前者は、CVRが5%。後者はCVRが3%だったとします(わかりやすいように単純化しています)。すると、ABテストの結果、当然前者が採用されるわけですが、ここで、ユーザー全体を、一人のユーザーとして見てはいけません。あるクリエイティブで良い効果が出ても、すべてのユーザーが同じ人ではないので、反応しなかった残りの95%のユーザーを、別の訴求ポイントで取りに行く必要があります。刺さる訴求は人によって異なるので、最初の5%が下がってきたら、もう一つのクリエイティブで95%の人に訴求する。その繰り返しです。

このように、一度勝ちパターンを見つけたからと言って、そのまま出していると当然効果は下がってきます。グロースハッカーには継続的にカイゼンをすることが求められるのです。つまり、「一番いい答え」を見つけるのがゴールではなくて、全く異なる一人一人のユーザーを、順番に獲得していくことが継続的な成長施策となるのでしょう。当然、効果が落ちてくれば次の施策を試すのですが、それが、「ターゲットとなるユーザーを刈り取ったからなのか」「飽きられたからなのか」など、理由をつけて次へ進めるかが、継続して施策を出す上で大事だと考えています。

5.全体最適と部分最適

よく、「どっちがいいかわからないからABテストをしてみよう」というセリフを聞きます。仮説を立てた上でテストするならよいのですが、それ以前だとストーリーがないため、単発の施策に終わってしまいます。

ここまではまだよいのですが、これをやみくもに20箇所くらいで実施したらどうなるでしょう?それぞれのパーツ、機能では最適化が図れるのかもしれませんが、プロダクトとしてのメッセージ、世界観にコンフリクトが生まれていないでしょうか?例えば、会員登録ページではテキストオンリーのシンプルな構成なのに、中に入るとゴテゴテのビジュアル。部分的なABテストの結果のみを採用していくと、一つのサービスとしての、全体のバランスが崩れてくると思います。

もっとわかりやすい例だと、収益化のために入れる広告を目立つ場所に設置したら、収益は増えた。しかし、見栄えは悪いし、ユーザビリティも下がった。短期的には収益のKPIを優先させたいが、中長期的にはユーザーが嫌になってしまうのではないでしょうか。(得た収益も、当然サービス運営、改善のための投資となるので、悩ましいところです)

など。プロダクトのプロデューサー・ディレクターには、ユーザーの利用状況、コンテンツの編集、マネタイズ、各所のKPIをみつつ、一貫したユーザー体験を設計することが求められます。まだこんなことはないと思いますが、強烈なグロースハッカーが入社してきて、成長に関するデータと、提供したい世界観の相違でケンカになることが今後あるかもしれません。

僕は現在、両方を担当することが多いので、人格を2つ創って、自分の中でケンカさせています。もちろん、サービスが長期的に成長するために、最善の策を取っているつもりです。

おわりに一つ事例を

入り口の最適化の例を一つ(以前onlabでお話させていただいた時の資料です)。ここはサービス全体への影響が少ない部分なので、単体での最適化は比較的し易いです。このような施策はうまくいくことが多いのですが、施策が複数出てきた時に、サービスとしての全体最適ができるようになるといいなあ、といつも考えています。ユーザーがサービスに触れるところから、使ってくれるところ、友達に紹介するところ、使い終えるところ。とくに、コンテンツを扱うサービスに関しては、感覚的に質や世界観を判断せざるを得ない状況もあります。グロースハッカーとディレクターはお互いの世界をはみ出し、サービスを演出していけると良いのではないでしょうか。

 

P.S.

僕と一緒にボケてや、現在仕込んでいる新サービスをグロースハックしてくれるエンジニアを募集していますので、興味ある方はぜひランチしましょう(連絡はosamuise@halo-web.comまで)。渋谷のハロオフィス見学もお気軽にどうぞ。

プロデューサーにもシェアの文化を。@MOVIDAスクールにて

先日、孫泰蔵さんが主催するMOVIDA JAPANさんでお話をする機会を頂きました。

名だたる経営者がお話されているコーナーなので、僕は経営というよりは事業を行っているプレイヤーとして、アプリを事業にするためのTIPSについて1時間くらい情報提供しました。お声がけいただいたイトケンさん、ありがとうございました。

これからプロダクトをリリースするチームが多かったので、出す前、そして出した直後くらいにどのように進めていくか、という割と具体的な内容をお話しました。

質疑応答を長めに行ったのですが、自分のプロダクトにこだわりを持った方に質問をいただくと嬉しいですし、協力したいな、と思ってしまいます。逆に、なにかイイネタないかな、とか、誰かこんなのつかうといいな、なんて具合だと、本気でそのプロダクトを世に出したいのか?などと考えさせられます。レベルの差はあれど、一人で考えこむのではなく、他チームや外部の方と刺激を受けつつものづくりをするの大事だと思います。

ところで、僕は割とこういった場に出るのが好きなのですが、それは目立ちたがり屋であることに加え、もう一点理由があります。

「エンジニアコミュニティにあるシェアの精神を、プロデューサー、ディレクター、マーケターの間にも根付かせたい」

ボケてを運営している株式会社オモロキのゆーすけべーこと和田さんと話していると、Perlのコミュニティに助けられていることが多い、と。その中では、LINEやDeNA、GaiaXなど、同じ言語を使う各社のエンジニアが情報をシェアしあったり、フレームワークを共有したりし、好きな言語のコミュニティを育て、楽しそうに仕事をしている。素晴らしいな、と。マーケティング周りでの情報共有は難しい面もありそうですが、出来る限り文化を進化させたいと思うようになりました。

例えば、今の僕はこんな課題を抱えています。

  • ユーザーが300万人を超えてきそうな時の「カベ」の突破の仕方
  • 日本以外の国、特に韓国、台湾、そして英語圏で展開するときの最初の一歩の手法
  • 複数企業にまたがるチームでのサービス運営 etc…

おそらく、上記の課題を乗り越えた日本のサービスってまだ少なくて、皆、試行錯誤でやっていると思います。だから、その段階で情報は共有し、全員で突破すればいいんじゃないかと。ただ、クックパッドやニコニコ動画、pixivなどのメディアや、CocoPPaなどのアプリ、パズドラやコロプラさんのゲームなど、多くのユーザーに使われ、海外でも人気を得ている事例もいくつかあったり、幅を製造業などに広げたら沢山。

ただ、なかなかそのノウハウは外に出てきません。だから、僕らがこういう情報を得たい時って、とにかく自分から持ってるものを出して、まずは与えよ、的に進めるのが一番いいと思うんです。

まわりのサービスは決して敵じゃなくて、世の中を一緒に進化させる仲間だと思えると、楽しく仕事ができると考えています。僕も、僕が得たほんのすこしのノウハウも、あと数年で化石になってしまうので。

内容は、下記に記事にしていただきました。感謝。

THE BRIDGE:【企画】ベンチマークするサービスは、点ではなく線で観測しろ−−イセオサム氏が語る「事業としてのスマートフォンアプリの心得」 ※写真もこちらより拝借

U-NOTE:250万DLを超えたboketeをプロデュースするイセオサムが語る「アプリを事業化するための10のTIPS」

 

P.S.

こういった場の質疑応答で、多くの気づきを得ることが多いので、もし機会を頂ける場合は、お声がけくださいませ。

また、来年は世界に行くので、一緒にboketeを創る仲間を募集します。フロントエンドのエンジニア、デザイナー、コーダー、ディレクター、海外事業担当で興味ある方は、osamuise@gmail.comまでご連絡いただけたら嬉しいです。

同じくボケてコラボ委員会(http://omoroki.com/bokete-collabo/)では、アカウントプランナー、プロデューサーを募集しています。
興味ある方は、info@catch-ball.co.jpまでご連絡下さいませ。

 

書評:藤田晋さん『起業家』 〜なぜサイバーエージェントはメディア事業をやるのか〜

藤田さんの新刊「起業家」を読んだので、感想をまとめます。

他の著作と異なり、広告代理事業からメディア事業への転換について具体的に書かれているので、業界の方には圧倒的に面白い本に受け取れると思います。個人的には、「起業家」というよりは、「コンプレックスを超える経営」的な内容として受けとりました。落ち着いたときにそのストーリーをまとめて感じたくて、ゴールデンウイークに一気読み。

サイバーエージェントは、同じ業界にいる者として、非常に面白い会社です。

  • 社員がみんな優秀かつイイやつ。
  • どんな事業でも、変化があっても、やり切る。
  • 代理店として味方につけたら頼れる仲間。
  • メディアとして競合するときは脅威。
  • 女子社員は、ほぼもれなくキラキラしてる。

僕はこんな認識を持っていて、どこにも似ていない会社だと思ってます。

 

僕とサイバーエージェント

藤田さんとサイバーエージェントは、僕が一方的に思っている、特別な存在です。僕が日テレにいたころ、前作の渋谷ではたらく社長の告白を何回も読み、起業することを決心しました。オプトで修行中も、競合の会社であると同時に、派手な納会や、マークシティのオフィスがちょっとうらやましかったり。ハロを立ち上げてから、パートナーであり、競合として一番深く関わったのが昨年の2012年。 僕らの主力商品だったiPhone / androidアプリ「アドラッテ※」の効果に真っ先に気づき、サイバーエージェントグループ全体で販売してくれました。ピーク時は、ハロの売上の過半数がサイバーエージェントからのものになっていました。この時は、本当に心強い会社だとメンバーと話していました。(※現在はアップディスコジャパン&GREEに譲渡) しかし、見てくれや機能がほとんど同様のプロダクトを自社で開発したり、知人の開発会社にまったく同じ物を作ってくれ、と依頼しているのを聞いたときは、「これが昔、本で読んだ、サイバークリック戦略か!」と震えましたw 最初は代理販売、よければ同じようなメディアを創り、一気に広告費を投下してシェアを奪いに行く。資本力を活かしたリスクの少ない、正攻法だと思いますが、それに対する対抗策を当時、僕らは持てずにいました。

昔、本で読み、憧れていた会社と、同じフィールドで仕事をしたり、戦ったりしているのは非常に面白いです。別の業界にいたときは、インターネット業界の、ベンチャー起業家のストーリーの一つだと思っていたところに、自分がいること。というわけで、新作の「起業家」も、藤田さんならではのドライブ感のある文章を期待して、Kindle版で一気に読みました。

 

「起業家」を読んで

サイバーエージェントの「21世紀を代表する会社をつくる」というビジョンとその意義について考えさせられました。

これまで、ポータルではLivedoorに突き放され、コミュニティでは投資先でもあったmixiにぶち抜かれ、ゲームではDeNA、GREEに遅れをとった藤田さんのコンプレックスが、サイバーエージェントのこの10年を突き動かしていたんだな、という感想です。決して一番最初に事業を生み出すタイプの会社ではないが、広告代理事業、メディア事業、金融事業とインターネットに軸足を置きつつ、ポートフォリオを組むスタイル。

しかし、「21世紀を代表する会社」にするための第一ステップは、「売上1,000億円、営業利益300億円の会社を作りたい」。手段として、「広告代理事業だと営業利益率は10%が限界だから、メディア事業をやろう」 そこで自分がプロデューサーとして陣頭指揮を取り、一気に会社全体をAmeba色にする。

ただ、この本にもあるように、事業の転換は非常に難しい。

規模は大きく違いますが、20人と少しのハロは、5年前の創業時は広告代理事業からスタートして、今はスマートフォンに特化したメディア事業、マーケティング事業を行う会社に転換しました。きっかけはスマホの流れが一気にきた2012年からですが、創業時からモバイルでメディアを運営するために、タイミングを見計らっていました。ピボットというものではなく、全く別の事業を行えるように体質を変化させることが必要なので、非常に難しかった。広告代理事業は枠を仕入れて売るため、基本的に初期投資は不要。一方、メディア事業は、まずユーザーを集めて、そこから一気にマネタイズする。この考え方の変化に、大苦戦しました。

メディアをやるには、権限移譲じゃなく、キチガイがワントップでやる。メディアを創るって、ただの仕事ではないと考えています。

正直、2,000人近い規模のサイバーエージェントでこの転換を成し遂げるのは、一種のパラノイアでないとできないことだと思います。(ここが一番の読みどころだと思うので、詳しくは本にて)

<メディア事業に関して響いたところ5点>

  • 権限移譲じゃなく、自分がワントップでやる。
  • 広告代理事業のオマケみたいな小さいメディアじゃなくて、腰を据えて大規模に立ち上げる。
  • メディア事業をやるには知名度が大事。名乗りを上げるのはタダ。
  • インセンティブをつければ、ユーザーはサービスを乗り換える。後発でもまくれる
  • 収益化に本気で取り組まなくとも、自然と損益分岐点を超えていくような事業でなければ、本当に収益力のある事業には育たない。5億PVで収益化させ始めれば、そこがアッパー。100億PVで収益化させ始めれば、100億PVのメディアになる。

<経営について響いたところ3点>

  • すごい会社に入った奴が偉いんじゃない。すごい会社を創った奴が偉いんだ。
  • 会社が「社員を大事にするよ」と呼びかければ、社員も「会社を大事にしよう」と応える。
  • 企業文化の土台をしっかり作り、社員を大切にすれば、どんな変革も可能である。

 

ビジョンについて

〜「起業家」より引用〜

サイバーエージェントのビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」です。20世紀の日本で生まれ、世界に誇れる会社になったホンダやソニーのようになろう。そのくらいの売上規模、従業員数、世界的にも成功を果たし、そして社会への影響力をもつ会社になることが目標です。

僕はこの点が不思議に感じたのですが、なぜメディア事業をやるのか、またはその理念が外からみるとわからないんです。(内部では共有しているものがあるのかもしれませんが)広告代理事業では、利益率に限界があることは分かっています。そうすると、インターネット領域で残るはメディア事業、ゲーム事業、コマース事業など、自社でサービスをもつことが必要になります。

サイバーエージェントが「収穫逓増型ビジネス」であることの他に、なぜメディア事業をやりたくて、21世紀を代表する会社になることで、自社以外の誰が幸せになるのか?というのがこの本からは読み取れませんでした。(もしくは僕が感じ取れなかっただけかもしれません)目指したい自分の姿はあるけれど、いわゆる理念や「Why?」がわからない。メンバーも、「21世紀を代表する会社をつくる」手伝いをする、「数字が出る事業をやる」という目標をもつ方が多いと感じていますが、なぜ、メディアやゲーム、コミュニティをやるのか、やりたいのか。

ここまでビジョンを浸透させられるのは、正直すごいと思うと共に、僕には理解できない部分もあったりしますが、それがサイバーエージェントの強さであり弱さ、そして魅力なのでは、と考えています。最後にある、「全ての創造はたった一人の『熱狂』から始まる by 幻冬舎見城さん」が印象的ですが、藤田さんの熱狂は、アメーバであり、サイバーエージェントというプロダクトそのものなんですね。それが、事業の方向性よりも、土台となっている企業文化に支えられているところに、この会社の面白さ、20世紀の会社にはおそらくなかったであろう特徴を感じます。

僕はまた別のアプローチで、21世紀型のチームでメディア事業を行なっていますが、自分のフェーズが変わるごとに、違った視点を与えてくれる本になると思います。