ドッドッドリランドで世界は良くなったのか?

 

母の日ということで実家へ顔を出したら、父親から

「GREEのコンプガチャが違法で中学生から40万円巻き上げているらしいが、お前のところは大丈夫なのか?」

と質問が来た。

なるほど、テレビや新聞でも大きく報道しているようで、「コンプガチャ」という言葉は60くらいのおっさんにも普及している模様。母親は、昆布?とか言っていたが。

彼の認識としては、下記3点のようだ。

・コンプガチャ禁止でGREEやDeNAほか、ソーシャルゲーム企業の時価総額が2000億円ほど吹き飛んだ

・被害者が出ていて、しかもそれが子供だ

・若い奴らがやっていて、どうもパチンコみたいに不正に利益を上げているんじゃないか

という認識の模様。

お役所とメディアが潰しにかかっているイメージはLivedoorの時とやや重なる。

 

ソシャゲというものには沢山の突っ込みどころがありながら、なぜ「コンプガチャ」を禁止にするかというと、景表法で一番突っ込み安かっただけで、当局からするとどこでもよいから突っ込んでおけ、という感じでもあろう。

※もちろん売上の10%から最大半分以上を占めるとなると、一番影響が大きいところだとも言える。

(画像はzakzakから引用)

 

この年になると家族との会話も意外と役に立つな、と思うもので、既存の世代の価値観と新しい価値観のすりあわせ、そして事業自体が生み出す価値について考えさせられた。

 

世代による価値観の違い

父は理系のサラリーマンで、ひとつの会社に35年くらい勤め上げたタイプ。経済が成長し続けていて、その見通しがあった昔ならそれが「普通」だろうし、悪くない仕事人生なんだと思う。おそらくその時代なら、僕も同じ選択をするのかもしれない。

ただ、当然そういった層はドリランドもやったことなければ、「ベンチャーは金に目が眩んだやつがやるものだ」なんて偏見も持っていたりする。HALOでやっているスマホアプリの『アドラッテ』(注1)のビジネスモデルも知らない。なんかスマホでユーザーに課金させて儲けているんじゃないか、と一緒にしてしまうのも無理はない。メディアはそういう報道をしているから。

※注1:アドラッテは企業から広告費を貰って、その一部をユーザーに還元するモデル。

規模と影響力が大きくなればなるほど、多くの世代に理解してもらう活動が必要になる。僕だって、親にやっている仕事の内容を理解して貰えないのは悲しい。その事業の意義をしっかり言葉にし、サービスに反映していくことを続けていくしかない。

それにしても、サラリーマンって給料として12カ月×35年=420カ月連続で会社に月何十万も課金し続けてもらえるなんて、どんなにLTV高いんだ。

 

事業が生み出す価値

先日の「僕の遠いところへ行ってしまったGREE」というエントリーでも書いたが、「企業は変化するもので、行き過ぎるときもあるけど方向転換は可能」だと考えている。しかし、そのベースにあるのは企業、もしくはサービスの「理念」である必要があると思う。距離と方向性を持ったビジョンを描くのは難しいけど、基本の考え方である「理念」は持てる。

元博報堂人事の山本直人さん(今はフリーランス)の「GREEは何がしたいんだろうか」というエントリーが僕はお気に入りなので引用させていただきます。

駅構内のB倍ポスターに、こんなキャッチコピーがあった。
「インターネットを通じて、世界をより良くする」
GREEの企業広告だ。時期的にいって、リクルーティングを意識しているのだろう。ちなみにこのコピーは、いわゆる「コーポレートメッセージ」のようだ。隣には英語のポスターもある。
ただ、読んでみても「どうやって世界を良くするの?」ということはわからない。あまりにも抽象的だ。他のネット関連企業のステートメントだとしてもおかしくはない。
そんなことを思いながら、ホームに上がり電車に乗った。
額面広告はすべて「ドリランド」だった。GREEの提供するサービスだ。右も左も「ドッドッドリランド」。まあ、そのセンスとかは特にコメントしない。
ただ、ドリランドは紛れもなくGREEのインターネットサービスなので、先のメッセージに「ドリランド」を代入してみてもいいんだろう。すると、こうなる。
「ドッドッドリランドを通じて、世界をより良くする」
それで、世界が良くなるんだろう、きっと。
理念は素晴らしい。でも上半身と下半身の人格がネジレを起こしているような感じだ。
「ドリランドで、世界はこんなによくなった」
いつかの将来、そんな報告がされることを、僕たちは期待していていいのだろうか。

※ちなみに山本さんの『グッドキャリア』という本は僕が学生時代に知人に頂き、キャリアを考える上で感銘を受けた本です。くれた人ありがとう。シューカツ生はとりあえずGREEを受ける前に読んで欲しい。

 

@michikaifuさん「コンプガチャ問題」に見る新興勢力の危機管理と矜持というエントリーも面白い。会社の根本はなにかというと、理念だ。ザッカーバーグも言う。壮大な理想があってこそ、仲間がついてきて、社会に認められるようになり、事は成される。応援してくれる味方がいないと、あっという間に潰される。

例えばfacebookをメインプラットフォームとする世界最大のSAP(ソーシャルアプリプロバイダー)であるZyngaの利益を比較すると、売上は10倍くらいあるが、利益はGREEやDeNAと同等クラスである。最近、これは社会から絞り取り過ぎないよう、ユーザーが継続して楽しめるビジネスモデルとして、一定レベルでコントロールしているのでは、とも考えている。(もちろん、日本におけるキャリア決済の普及、ユーザーの課金慣れという24時間ゲーセン状態があったとしても)

 

「インターネットを通じて、世界をより良くする」

ゲームで世界を獲るのか、インターネットを通じて世界をより良くするのか、そのメッセージは統一していくべきなんだな、と思う。僕ら自身の会社も、これまで理念と事業をなかなか一致させることができなかったから。特に去年はそのねじれに悩んだ。

HALOの理念は「希望が生まれるシカケをつくる」。ビジョン、事業は時代によって変化させているが、この理念は創業4年間変えていないし、これからも変わらないだろう。理念は会社がなにをやるべきか、やらざるべきか迷った時の指標になるもの。僕らはこれがあったから、道を外れるサービスやそのお手伝いはしないと考えてきた。でも、やらないことがあっただけで、やりたいことが見つかっていなかった。(今年、4年目になって、やっと見つかった気がする)

「やりたいことがなくなった時、人は何かで1番を目指そうとする」のではないかと僕は考えている。(もちろん、何かを実現するためには一番であることが必要な時もある)しかし、今のGREEには世界進出という壮大なビジョンがあるが、肝心の理念からサービスが離れて行ってしまっているのを感じている。

ねじれが気になるだけで、「ゲームで世界を良くする!」と言ってしまえばスッキリするんだけどね。

※僕より優秀なGREEのみなさんはとっくに気づいていると思うけど。

 

 

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